犬によくある疾患
慢性腎不全
腎臓に慢性的な病変が存在することで、腎臓の機能低下を引き起こす病態です。数ヶ月から数年にわたって進行して悪化していきます。症状は、多飲多尿・脱水・貧血、さらに進行すると尿があまり出なくなったり、神経症状などの症状を示す末期腎不全、尿毒症へと進行します。
原因ははっきりとわかっていない部分もありますが、腎炎や腎結石、先天性疾患、腎毒性のある物質の摂取など様々です。慢性腎臓病はある程度進行しなければ症状が現れないため、定期的な血液検査や尿検査、エコー検査などで腎臓の状態をチェックすることが大切です。
腎臓の機能は一度失われてしまうと回復させることは難しく、輸液によって脱水を防いだり、腎臓に優しい食生活に変えるなど、少しでも進行を遅らせることを目的として治療を行います。
尿路結石症
腎臓や膀胱などに石のような物質(結石)ができてしまう病気です。結石の刺激によって粘膜が炎症を起こすだけでなく、尿管や尿道に詰まって尿が出なくなる尿路閉塞の原因にもなります。このような結石は、飲水不足や脱水により尿が濃縮されたり、細菌感染によって尿のpHが変化することによって形成されやすくなります。
遺伝的に結石のできやすい犬種や猫種も存在します。結石は尿検査やエコー検査、種類によってはレントゲンでも確認することができます。結石は溶けるものと溶けないものがあり、溶けるものであれば内科治療を優先的に行います。しかし、溶けない結石や大きすぎる結石の場合は外科治療が必要になる場合があります。
膀胱炎
膀胱炎は、膀胱内の粘膜が炎症を起こす疾患です。一般的に、細菌が膀胱に侵入し、増殖することによって引き起こされます。症状には、頻尿、排尿時の痛みや不快感、血尿、尿意があるのに尿が出ないことが挙げられます。犬が排尿の際に苦痛を示すことや、排尿後に舐めたり興奮したりする行動を見せることもあります。膀胱炎の原因には、細菌感染が最も一般的ですが、他の要因によっても引き起こされることがあります。これには、尿路の異常、膀胱の結石や異物、免疫不全、ストレスなどが含まれます。
診断には、臨床症状の観察、尿検査(尿沈渣の顕微鏡検査や尿培養)、血液検査、超音波検査などが行われます。治療には、抗生物質が処方されることが一般的です。また、炎症を軽減するための抗炎症薬や痛みを軽減する薬、尿路の洗浄などが併用される場合もあります。さらに、水分摂取を増やし、犬が十分に排尿できるようにすることも重要です。重症の場合や、再発性の場合には、原因の特定や予防のために膀胱洗浄や手術が必要になることもあります。