【症例紹介】猫の肺腺癌:手術後の転移を経てQOL維持が確認されている一例
【症例概要】
猫:ブリティッシュショートヘア
8歳/雄(去勢済み)
お名前:ラムネちゃん
主訴:くしゃみの増加
診断名:肺腺癌(手術後・肺内転移)
本症例は、高度医療機関で手術と抗がん剤治療を受けた後に転移が確認された猫が、治療方針を変更し、現在も生活の質(QOL)が保たれている一例です。
1.発見の経緯と診断
飼い主様がくしゃみの増加を主訴に受診されました。
画像検査で肺に陰影が確認され、約1年前の健康診断でも同部位に異常が疑われていましたが、当時の検査では確定診断には至りませんでした。
その後、陰影の増大が認められ、高度医療機関での再検査により肺腺癌と診断されました。
2.高度医療機関での標準治療(手術と抗がん剤)
転移が認められなかったため外科的切除が行われ、術後はカルボプラチンによる抗がん剤治療を10回継続されました。
しかし、治療終了後のCT検査(2025年4月)で肺内転移が確認されました。担当医からは、
「このまま何もしなければ余命は3ヶ月程度」
と説明がありました。別の抗がん剤(ドキソルビシン)も試みられましたが、副作用により継続は困難となりました。
3.転機:当院を受診された経緯
抗がん剤の継続が難しくなった段階で、飼い主様はこの子に合う別の向き合い方を模索されました。
延命のみを目的としない治療を求め、生活の質(QOL)を重視するケアを希望され、当院を受診されました。
4.当院での対応(統合医療的アプローチ)
当院では、西洋医学を基盤としつつ、必要に応じて補完療法も取り入れる統合医療の視点で治療方針を検討しました。
これまでの治療履歴を尊重したうえで、
• 有機ゲルマニウム点滴
• マイヤーズカクテル
• 食事療法
を中心としたサポートを開始しました。これは延命のための積極治療ではなく、QOLの維持を主眼とした選択です。
5.経過(転移確認から現在まで)
抗がん剤治療を中止してから6ヶ月が経過していますが、現在の状態は次のとおりです。
• 食欲は保たれています
• 軽度の遊びやスキンシップが可能です
• 呼吸状態は安定しています
• 日常生活に大きな支障は見られません
飼い主様の希望により再度のCT検査は実施していませんが、診察および日常観察の範囲では、現時点で生活の質が維持されていると判断しています。
転移確認後の抗がん剤投与後
直近
6.当院の見解
本症例は、標準治療後に転移が確認されたケースにおいて、統合医療を用いてQOLの維持を目指した一例です。
当院では、
• 身体的負担の軽減
• 飼い主様の価値観の尊重
• 生活の質(QOL)の維持
を柱とし、標準治療と補完療法を適切に組み合わせる統合医療を提案する場合があります。
7.免責
本症例は一例であり、同様の経過や結果を保証するものではありません。治療の選択は、個体差や生活環境を踏まえ慎重に判断する必要があります。
さいごに(飼い主様へ)
治療の向き合い方は一つではありません。不安や迷いがある際には、一人で抱え込まずご相談いただければと思います。